◆目次
1.変形性股関節症とは?
―変形性股関節症の「原因」
―変形性股関節症の「症状」
―変形性股関節症の「診断」
変形性股関節症(OA:Osteoarthritis of the hip)とは、股関節の軟骨がすり減り、関節の変形や痛みを引き起こす病気です。
症状が進行すると歩くのが困難となり、重度になると「人工関節手術」を行う必要となってしまいます。
変形性股関節症の原因は大きく2つに分けられ、「一次性(特発性)」と「二次性」に分けられます。
一次性とは明確な原因がないタイプであり、加齢に伴って発症することが多いです。
二次性とは先天性や外傷など、何らかの原因があるタイプであり、「先天性股関節脱臼(小児期に股関節が正常に発育しなかった場合)」、「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」、「ペルテス病」、「大腿骨頭すべり症」、「関節リウマチなどの炎症性疾患」などが主な原因となります。
変形性股関節症の症状は進行度によって違いが出てきます。
初期症状としては、「運動時の股関節痛(特に歩行時や階段の上り下り)」や「こわばり感(朝起きた時に関節が硬く感じる)」といった一時的な違和感を感じる程度なので、この時点では気づきにくい方がほとんどです。
進行期になると、「可動域制限(脚を開きにくくなる、しゃがみにくい)」、「歩行障害(歩き方がぎこちなくなる)」、「股関節の違和感が常にある」といったように、日常生活に支障が出始めます。
末期になると「安静時でも痛みがある」、「関節が変形し脚長差が生じる」、「歩行困難になる(杖や介助が必要)」など、生活の質が下がり、手術が必要となってきます。
また、症状の進行は股関節に痛みが出てはじめると、急速に症状が進行するので、早期の治療を行なうことが望ましいです。
変形性股関節症の診断としては、様々な画像診断が行われます。
X線(レントゲン)を用いた診断は、最も一般的な検査であり、「軟骨のすり減り」、「骨棘(こつきょく、骨のとげ)の形成」、「関節の隙間の狭小化」などを見ることができます。
MRIを用いた診断では、「軟骨や関節周囲の損傷をより詳細に確認」することができ、X線では見えない初期の変性(軟骨の摩耗や関節液の異常)を検出することができます。
CTスキャンでは、骨の変形や摩耗を立体的に観察することで、「骨の詳細な変形をチェック」することができ、骨の位置関係(骨切り術や人工関節の適応を判断)や骨嚢胞という骨の内部にできた嚢胞(空洞)をより正確に把握することができます。
そのため、大まかな流れとしてはX線(レントゲン)による診断後、手術を行うなど必要に応じてMRIやCTスキャンを行う場合が一般的です。
保存療法としては、「運動療法」、「体重管理」、「装具療法」、「薬物療法」などが一般的には行われますが、痛みを軽減するといった対処療法であり軽度な方には効果はありますが、中~重程度の症状になると保存療法ではあまり効果は出なくなります。
手術療法としては、「骨切り術」や「人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)」という手術が行われます。
手術を行うと痛みが軽減し歩行能力が改善されますが、リハビリに数か月かかることや、高齢者の方は体への負担によるリスク、さらに人工関節にも寿命があり、15~20年後に再手術が必要になる可能性があります。
再生医療は、手術をせずに軟骨を修復する治療であり、「PRP(多血小板血漿)療法」や「幹細胞治療(自己脂肪幹細胞移植)」といった治療が行われています。
これらの治療法は、一般的に点滴投与や軟骨の関節包という袋に注射することにより、軟骨を修復する治療となります。
点滴投与や関節包への注射は技術的に実施しやすく一般的に採用されていますが、変形性股関節症では関節の隙間が狭いため、注入された幹細胞が関節内の損傷部分に到達するのが難しく、さらに重力がかかるため、幹細胞は関節包の下部に滞留し、損傷部分へ到達することが困難となります。
そのため、幹細胞やPRP本来の治療効果はあまり見込めないでしょう。
当院では、「PRP」や「自己脂肪由来幹細胞」を軟骨の関節包ではなく、損傷部位にピンポイントで注射する治療が可能となっています。
一般的に使用されるレントゲンとは違い、上下左右から立体的にとらえられる特殊なレントゲンを使用しているため、損傷部位へのピンポイントの注射が可能となっています。
また、当院の医師であるDr.田中は内視鏡による手術など繊細な動きが要求される手術などの経験が豊富で、より精密な手術ができるというのもピンポイントで注射できる理由の一つとなっています。
今回は「変形性股関節症に対する手術を避けるための再生医療による治療」についてご紹介しました。
今回のポイントは…
・変形性股関節症は股関節に痛みが出始めると、症状が急速に進行するため手遅れになると手術が必要になる
・PRPや幹細胞といった再生医療による治療は、股関節の軟骨を修復する
・PRPや幹細胞は損傷部位にピンポイントで注射することで、高い効果が得られる。
前述したように、変形性股関節症は放置しておくと手術が必要になるケースが多く、手術となると費用が高くなったり様々なデメリットやリスクがあるので、症状が出始めたら、軟骨を修復する再生医療による治療を行なうことがオススメです。