「歩いたり、手作業をしていると痛みやしびれが発生するけど休めば治る」という経験をしたことはあるでしょうか? ある程度、休めば治るからと思って放っておく人も少なくありませんが、もしかしたら病気の初期症状かもしれません。ここでは腰部脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症の代表的な初期症状として知られる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」について解説。腰部脊柱管狭窄症だった場合、日帰りで受けることができる手術もご紹介します。
┃1.間欠性跛行とは
間欠性跛行とは、一定の距離を歩くとふくらはぎなどの下肢や臀部に痛みやしびれが出て、歩行が困難になる症状です。痛みやしびれが出た場合でも、少し休めば再び歩けるまで回復し、また歩き始めると症状が再発してしまうという特徴があります。
原因となる疾患は主に、腰部脊柱管狭窄症の神経性のものと、閉塞性動脈硬化症の血管性の2つ挙げられます。腰部脊柱管狭窄症の場合は整形外科、閉塞性動脈硬化症の場合は心臓血管外科や循環器内科での診察が必要となります。
<腰部脊柱管狭窄症とは>
脊柱管とは背骨を構成する骨である「椎骨」とそれを繋ぐ椎間板や靭帯に囲まれてできたトンネル状の管のことです。その中には脳から続く脊髄神経が通っています。脊柱管狭窄症は名前の通り、脊柱管が狭まってしまった状態のこと。椎間板がヘルニアになったり椎骨が変形したりして脊髄神経が圧迫されると、痺れや痛みなどの運動障害が起こることもあります。
腰部でこの症状が起きると、腰から下に痺れや痛みが起こります。初期症状は神経の圧迫が軽いので、何かしらの異変があっても日常生活にそれほど影響がない場合がほとんどです。ただし、長期間放置しておくと、筋力の衰えや骨密度低下などにつながる可能性も。心当たりがある人は受診をおすすめします。
<閉塞性動脈硬化症とは>
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因で、手足の動脈が細くなる「狭窄(きょうさく)」や、血管が詰まってしまう「閉塞」が起きてしまう症状です。狭窄や閉塞が起こると、栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなるので、手足の指先が冷たくなったり、筋肉に痛みが出ます。
┃2.何科を受診するか考える
腰部脊柱管狭窄症と、閉塞性動脈硬化症の症状の特性についてまとめました。間欠性跛行に悩んでいる方は、何科を受診するべきか考える際の参考にしてみてください。
<腰部脊柱管狭窄症の特徴>
- お尻から足にかけて痛みやしびれがある
- 砂利を踏んでいるような違和感が起こるなど、足底の異常感覚
- 肛門周辺にしびれやほてりがある
- 歩き始めると痛みやしびれが出てあるけなくなるが、休むと症状が収まり再び歩けるようになる(間欠跛行)
- ふくらはぎのこむら返りが起こる
- 歩いているときに膝が抜ける
- 歩いていると地面に足が引っかかることが増えた
- 排尿時、すぐに出てこなかったり、漏らしてしまったりする
<閉塞性動脈硬化症の特徴>
- 手足が冷たい
- 下肢の肌色が紫や白色などに変色している
- 手足やお尻、腰回りにしびれがある
- 歩くと足が痛くなったり、しばらく手作業をしていると手が痛くなる(間欠跛行
- 足に皮膚がえぐれたような潰瘍ができる
- 手足の動かしにくさが、左右で異なる
- 足のちょっとした傷が治りにくい
┃3.腰部脊柱管狭窄症の場合の治療法について
整形外科を受診し、腰部MRI検査をしたときに脊柱管狭窄症が認められると、具体的な治療計画を立てていきます。軽症から中程度であれば3割程度は自然によくなる可能性もあります。そのため日常生活に支障がなければ、手術をすることなく薬や注射による治療で様子を見ていきます。ただし経過観察中に症状が進行したり、痛みがあまりにも強いという場合は、手術して根本原因を解消するのも1つの方法です。
症状が悪化すると、ほかの組織に何か影響を及ぼしてしまう可能性はゼロではありません。もしも脊柱管狭窄症が悪化した場合、筋肉量の低下や骨密度の低下するので、運動機能が落ちたり骨折しやすくなります。そのリスクを考えると、日帰りでできる手術もあるので、計画的に手術を行い、脊柱管狭窄症の根本原因を取り除くのもいいかもしれません。
┃4.日帰りでできる手術「PEL」について
当院では脊柱管狭窄症の根本原因に広く対応できるような治療方法を用意しています。ここでは当院で提供している脊柱管狭窄症の日帰り手術「PEL(脊柱管狭窄症内視鏡下手術)」をご紹介します。
<PELとは>
PELは全ての手術操作を内視鏡下で行う手法。体を大きく傷つけずに、脊椎内部の奥深いところが観察できるので、より安全に手術ができるというのが大きな特徴です。今までは脊柱管狭窄症の手術は全身麻酔で行う手術方法しかなく、高齢や他の重篤な症状がある患者は受けることができませんでしたが、PELが編み出されたことによって、脊柱管狭窄症の手術は多くの人が受けることができる治療になりました。そんなPELについてポイントごとに紹介します。
【低侵襲な治療法】
脊柱管狭窄症で採用されていた従来の切開法の手術では、10cm~15cmの切開口が必要でした。その後、従来の手術法よりも切開口が1㎝~2㎝と狭い内視鏡手術「MEL」が広まりました。PELは、MELよりもさらに切開口が小さい、7mm~8mm。傷口が残り辛く、低侵襲な治療法として確立されています。手術時の出血量が少なく、筋肉への負荷も少ないのが特徴です。
【高齢者でも治療を受けやすい】
切り口が小さいため、全身麻酔ではなく局所麻酔での手術が可能です。そのため重篤な症状を抱えている患者や、体力の少ない80代の超高齢者でも手術を受けることが可能です。
【日帰りで手術を受けられる】
局所麻酔で行うので、日帰りで手術を受けることができます。そのため仕事や日常生活のスケジュールも立てやすいです。またその日に帰ることができるので早期社会復帰も見込めます。
┃5.まとめ
間欠性跛行が症状として出たら「休んでいると治るから」と放っておくのではなく、症状が進む前に早めの受診をするようにしましょう。とくに脊柱管狭窄症だった場合は、早く対応すればするほど後遺症が残る可能性が少なくなります。間欠性跛行の手術は、症状を回復するというための手術という捉え方だけでなく、「運動機能低下を予防するための治療」という考え方もできます。長く健康的な生活を送るためにも、症状に心当たりのある方は早めの受診をすることをおすすめします。