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2025.03.14

パーキンソン病の症状は?原因と再生医療による治療の可能性を解説

「パーキンソン病」を発病すると、身体に震えが現れたり、運動の遅延、姿勢のバランス維持が難しくなるなど、日常生活にも大きな影響が出てきます。現在は根本治療が難しいとされており、進行を遅らせることしかできていません。しかし、近年の再生医療の研究が進んだことで、根本的な治療の可能性が高まってきました。ここではパーキンソン病の特徴的な症状についてと、再生医療の中でも「幹細胞」を使った治療法についてご紹介します。

┃1.パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳の特定の領域がだんだんと変性していく病気です。脳の機能を司る中枢神経系の変性疾患の1つで、その中ではアルツハイマー病の次に多い病気です。日本においては1000人のうち1人~1.8人が罹患しており、年齢とともにその割合は高くなっていきます。

主な症状として、筋肉が安静な状態にあるにもかかわらず震えが起きたり(安静時振戦)、筋肉のこわばり、表情や瞬き、歩く、話すなどといった自分の意思に基づいて行う運動の遅延、バランス維持が難しくなるなどが見られます。また進行が進むと、患者の多くが認知症を発症します。

<脳内で起きる変化と身体症状の関係性>

パーキンソン病では、大脳基底核の黒質と呼ばれる部位の神経細胞が変性を起こします。

【大脳基底核の黒質とは?】

大脳基底核とは線条体、淡蒼球、黒質などといった神経細胞の集まりである「神経核」から構成される組織。知覚や運動、思考、記憶など脳の高次機能を担う「大脳皮質」や、嗅覚を除くすべての感覚情報を大脳皮質に送ったり運動機能の調整を行う「視床」、大脳と脊髄を繋ぐ中枢神経系の一部で生命維持に不可欠な働きを行う「脳幹」などと結び付いて、筋肉の運動を開始したり、動きを滑らかにしたり、自分の意思とは関係なく身体が勝手に動いてしまう症状を抑制したり、姿勢の変化を調整したりします。

その大脳基底核の一部である黒質は、中脳の一部を占める神経核。ドーパミン神経細胞を含んでおり、線条体にドーパミンを送ることで興奮を抑制する機能を担っています。これは運動調整や学習、感情のコントロールなどに深く関連しています。

脳から「腕を上げる」「足を前に出す」など筋肉を動かすための信号が出ると、その信号は大脳基底核に送られます。すると、大脳基底核の神経細胞も神経伝達物質を放出。隣の神経細胞が刺激されて、さらにその隣の神経細胞に信号が伝達されていきます。

大脳基底核の主な神経伝達物質はドーパミンです。ドーパミン神経物質を含む黒質が変性するとドーパミンの生産量が減ってしまうと同時に、大脳基底核の神経細胞同士の接続数が減少。そうすると、大脳基底核の「筋肉の動きを制御する」という機能が損なわれてしまい、震えが起きたり、歩行などに異常が現れたりします。

┃2.パーキンソン病の症状

初期はかすかな症状しか現れません。また症状は薬剤の副作用や加齢が原因で起こる症状にも似ていることが多く、場合によっては診断が難しい場合もあります。ここでは主な症状について具体的に解説します。

<震え>

筋肉が自分の意識とは無関係に収縮と弛緩を一定のリズムで繰り返すことで起こる身体の震え「振戦」が起こります。パーキンソン病の初期症状として最も多く見られる状態で、初期患者のうち約3分の2の人が振戦を起こしています。

【パーキンソン病患者の振戦の特徴】

  • 粗い動きが規則正しく繰り返されます
  • 静にした状態で、片方の手に震えが起こる(安静時振戦)
  • 親指と人差し指で小さな球を丸めるような手の動きが起こる(丸薬丸め運動)
  • 手を意図的に動かしているときには、あまり振戦が起こらない
  • 睡眠中に振戦はまったく起こらない
  • 精神的ストレスや疲労によって悪化することがある
  • 病気の進行が進むと、振戦がなかった手のほか、腕や脚にも起こるようになる
  • 顎、舌、額、まぶたに震えが出る
  • わずかに声に震えが起こる

<こわばり>

病状が進行するに連れて、筋肉が硬くなってしまい、こわばり(筋強剛)を起こすと動くことが難しくなります。また患者の腕を曲げたり伸ばしたりしようとすると、抵抗があったり、動き始めたりする状態を繰り返すという症状「歯車様強剛(はぐるまようきょうごう)」もパーキンソン病の特徴的な症状です。

<動作の緩慢化>

パーキンソン病が進行すると、動きが遅く小さくなっていき、動作の開始が困難になっていきます。そのため、患者は自らあまり動かなくなるようになり、結果的に関節が硬くなったり筋力が低下するなどの悪循環を引き起こします。

<バランス感覚の欠如>

姿勢が前屈みになりがちになります。また平行感覚を保つことが難しくなり、前方や後方に倒れてしまいます。またパーキンソン病の後期になると動作が緩慢になっていくので、倒れたときにとっさに手を着くことができないという問題も起こります。

<細かい作業が困難に>

手の筋肉が低下することで、日常生活に支障が出るようになります。例えば字を書くときに手が震えるため、字をできるだけきれいに書こうと字が小さくなる「小字症」が見られるようになります。このほか、シャツのボタンをかけたり、靴ひもを結ぶなどの細かい手の動きを使った動作が難しくなっていきます。

<飲み込む力の低下>

食道が食べ物などを送る動きもゆっくりになるので、飲み込むのが難しくなる「嚥下困難」をきたすことがあります。その結果、唾液や口にいれたものが肺に入ってしまう誤嚥(ごえん)が起こる可能性も高まります。

<排尿の問題>

排尿の開始と持続が難しくなる「排尿遅延」や、突如切迫した尿意を覚える「尿意切迫」、「失禁」などの排尿の問題が起こることもあります。

<便秘>

腸の内容物を送る動きがゆっくりになるので、便秘が起こる可能性があります。また運動不足や、パーキンソン病の治療に使われる「レボドパ」という薬によって、便秘が悪化する場合もあります。

<慢性的な寝不足>

排尿回数が増えたり、夜間に症状が悪化して寝返りが難しくなったりすることで、寝られなくなる「不眠症」や、本来は体が動くはずのないレム睡眠中に、夢の内容に合わせて体を動かしてしまう「レム睡眠行動障害」などが見られるようになります。

<表情が乏しくなる>

表情筋が低下することで、顔の表情が乏しくなってしまう「仮面様顔貌(かめんようがんぼう)」という症状が発現します。最終的には口を開けたままうつろなまなざしになり、まばたきの回数も減少していきます。

<吃音>

言葉を明確に発音できなくなるので、吃音(きつおん)を起こすことがあります。

<立ちくらみを起こす>

立ち上がった時に、過度の急激な血圧低下を起こすことがあります。(起立性低血圧)

<皮膚が剥がれ落ちる>

皮膚の角質層が剥がれ落ちる「鱗屑」が起こります。一般的に「ふけ」と言われているもので、これは皮脂の分泌が多い部位にできる湿疹「脂漏性皮膚炎」が原因であることがほとんどです。

<匂いを感じなくなる>

「嗅覚脱失」という、嗅覚が無くなってしまう症状も、パーキンソン病患者には多くいます。ただし、嗅覚が消失していることに気付かれないこともあります。

<抑うつになる>

気分が落ち込み、憂鬱な状態が続く「抑うつ」の状態になることが多いです。場合によっては、振戦などの運動症状が出る何年も前から発症することもあります。またパーキンソン病が重症化するのに比例して、抑うつ状態も悪化する傾向があります。

<認知症になる>

パーキンソン病疾患の約3分の1で、後期には認知症を発症します。認知症を発症した場合、幻覚や妄想、パラノイアが見られることもあります。この症状は現実との接触が無くなったため起きている症状なので、精神病症状とみなされます。

┃3.パーキンソン病治療の可能性

パーキンソン病の根本的な原因は脳の一部である大脳基底核の黒質が変性を起こし、機能しなくなることです。これまでは、神経細胞の再生や回復は難しいと考えられていたため、対処療法で進行を遅らせることしかできていませんでした。しかし近年、再生医療の研究が進展し、神経細胞も再生できる可能性が高まってきています。神経細胞の再生には「幹細胞」を使います。

<幹細胞治療とは>

幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。

ーキンソン病の治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。

<幹細胞治療がパーキンソン病に治療効果を発揮する原理>

静脈内に幹細胞を投与することで、幹細胞が血管内を移動しパーキンソン病で変性した脳に到達することが出来ます。それにより、幹細胞が変化した神経細胞を分化した健康な細胞と置き換えることができ、ドーパミンの放出する細胞になり、治療することが可能になります。また、静脈内投与された幹細胞は、炎症を抑える物質を増加させると報告されており、神経細胞が病気の進行で炎症反応することを抑制するメリットもあります。それらが相互に働くことで、幹細胞治療は効果が発揮されることが分かっています。

パーキンソン病は、加齢や遺伝子とも関連しているので、年をとっていくと誰でもパーキンソン病になる可能性があります。そのためパーキンソン病に対しては、個別の治療が必要になり、オーダーメイドの治療として役立つのはご自身の幹細胞を用いた幹細胞治療なのです。幹細胞を注入することで、変性部位や病変部位に到達した幹細胞はドーパミンを放出する細胞に置き換わり、ドーパミンの放出量を増やし、パーキンソン病を治療します。文献によれば、標準治療薬であるレボドパよりも、幹細胞治療の方が、臨床的な改善度合いが優れており、パーキンソン病の治療に幹細胞治療が効果的であることが分かりました。

┃4.当院の幹細胞治療の流れ

当院で行っている幹細胞治療の流れを紹介します。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

<①カウンセリング>

事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

<②検査>

感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

<③脂肪採取>

腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

<④幹細胞の培養>

脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。

<⑤幹細胞の静脈内投与、局所投与>

培養した幹細胞を点滴、局所に投与します。

<⑥経過観察>

その後の効果について定期的に経過観察を行います。

┃5.費用について

当院の治療メニューと料金をご紹介します。

項目 価格
医師による診察・カウンセリング 11,000円
感染症検査(採血) 11,000円
幹細胞点滴(1億個) 1,650,000円

┃6.再生医療のメリットとデメリット

再生医療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

<メリット>

  • 患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
  • 今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
  • 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

<デメリット>

  • 自由診療のため保険が適応されません
  • 新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
  • 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります

┃7.まとめ

神経細胞のように傷つくと自然に再生しない機能も、再生医療の発展によって回復できるようになってきました。数十年前には「難しい」と断られてしまった症状でも、今では治すことができるかもしれません。パーキンソン病治療に悩まれている方は、当院にお気軽にご相談ください。

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