院長ブログ

  • HOME > 
  • 院長ブログ > 
  • 胃がんの転移で起こる腹膜播種に高い効果を…
2025.02.02

胃がんの転移で起こる腹膜播種に高い効果を発揮する「腹腔内化学療法」とは?

胃がんや大腸がん、卵巣がんなど、がんが発生した箇所の治療を終えたあとも、怖いのはがん細胞の転移です。転移したがんは、初期症状が表れることも少なく、発見が遅れてしまうことも多々あります。ここでは腹膜に転移したがんの治療に効果的な「腹腔内化学療法」についてご紹介します。

┃1.腹腔内化学療法って何?

腹腔内化学療法とは、腹膜播種というがんに対して用いられる治療方法で、腹腔内に直接、抗がん剤を注入する治療方法です。ただし、病巣に対して薬剤が臓器の中に深く浸透するわけでは無く、あくまでその表面や腹膜などに出ている病巣に効果を発揮します。

患者の状態にもよりますが、通常は外来の通院で行うことができる治療です。投与後の食事や行動の制限もありません。

<腹膜播種とは>

腹膜播種は、胃や腸などの臓器とお腹の壁の内側を覆っている薄い膜「腹膜」にがんが転移した状態を指します。主に胃がん、大腸がんなどから転移する場合が多く、腹膜に転移すると種が撒かれたように腹膜にがん細胞が散らばることから腹膜播種という病名がつけられました。

リンパ節転移や肝転移と並んで、最も起こりやすい転移の一つでもあります。

>>腹膜播種について詳しく知る

┃2.腹腔内化学療法の順序

実際に腹腔内化学療法を行う場合、どのような手順で治療を進めるのか具体的に解説します。

<①腹腔ポートを留置する>

腹腔内化学療法を開始するため、先だって抗がん剤を投与するための注入口となる「腹腔ポート」を腹部の皮膚の下に留置します。腹腔ポートは本体とカテーテルで構成された装置で、注入口となる本体の直径は約3㎝ほど。カテーテルは直径約5㎜、長さは約30㎝の柔らかい管で、筋肉を貫いて腹腔の中に留置され、薬の通り道となります。

腹水がたまっている患者の場合は、腹腔ポートの代わりにカテーテルを留置して治療に使用することがあります。

<②腹腔内投与の開始>

腹腔ポートに針を指し、生理食塩水500mlを約1時間かけて注入します。このとき、点滴静脈内注射でアレルギーや吐き気を予防するための薬も投与します。

その後、生理食塩水500mlに溶かした抗がん剤を約1時間かけて注入します。

合計1,000mlの生理食塩水は腹腔内全体に広がり、腹膜播種の原因となっているがん細胞と直に触れることで治療を行います。

約2週間ごとに抗がん剤投与を行い、その都度治療経過を観察しながら治療計画を立てていきます。

┃3.腹腔内化学療法のメリットとデメリット

腹腔内化学療法のメリットとデメリットをご紹介します。いいところだけでなく、リスクなども考慮して治療に同意しましょう。

<メリット>

  • 腹腔内全体に抗がん剤を高い濃度で広げることができる
  • 抗がん剤が腹腔内に長く留まるので、高い効果を期待できる
  • 吐き気、食欲不振といった全身的な副作用が少ない

<デメリット>

  • 感染や閉塞など腹腔ポートに関連する合併症の可能性がある
  • 腹膜を刺激することによる、局所の炎症や、腹膜が癒着する可能性がある
  • 薬の排泄が遅いので腎機能障害が起きることがある
  • 1㎜以上の深いところまで薬が届かないので、元々がんが発生した箇所や、リンパ節の転移などには効果がありません。

┃4.費用について

パクリタキセル腹腔内投与は健康保険が適用されない治療です。その他の薬剤、検査や診察などを含めて保険を使用することができず、費用は患者さんの10割負担となります。初回の投与は外来で行い、その費用額は1回投与で約22〜33万円です。2回目以降も外来で行います。

┃5.まとめ

腹膜播種は、これまで手術では腹腔内に散らばったがん細胞を取りきることができず多くの患者を苦しめてきました。また標準治療では予後、いい結果があまり出ていなかった。しかし「腹腔内化学療法」が確立されたことで、がん細胞が非常に小さくなったり、腹膜播種の症状が見られなくなったりしています。もしも腹膜播種に苦しんでいる場合は、腹腔内化学療法を検討してみるのもいいかもしれません。

腹腔内化学療法

To Top
ご予約・お問合せ 24時間受付WEB予約 日帰り手術・がん治療のご相談