腰痛に悩んでいる人は多くいますが、根本原因について考えたことがあるでしょうか? 腰痛の要因は様々ありますが、背骨を指す「腰椎」に異常が起きていることがほとんどです。「何か違和感があっても、病院でどんな検査をするのか不安でなかなか受診できない」という人も多いのではないでしょうか? ここでは腰痛の原因となる「腰椎すべり症」についてと、病院でどのように診察するのかプロセスを詳しく解説します。
┃1.脊椎すべり症とは
腰椎すべり症とは、腰部分の背骨を構成する椎骨がずれてしまう症状で、下肢の痺れや腰痛などを引き起こします。すべり症には前にずれてしまう「前方すべり症」と、後ろにずれてしまう「後方すべり症」があり、すべり症患者のうちの多くは「前方すべり症」を発症しています。
┃2.すべり症の診断方法について
腰痛がひどく病院に行く場合、様々な原因を抱えていることもあるので、幅広く診断を行っていきます。ここでは腰痛の際の診断方法と、腰椎すべり症の可能性が高いと判断した際にどのように診察していくのか解説していきます。
<①問診>
まずは症状について患者さんからお伺いします。どこがどのように痛いのか、いつぐらいからなのかなど細かく聞き取りをします。他院で治療されているなどがあれば、その際にどんな診断をされたのかなどもお伺いします。
<②神経学的検査などの実施>
筋力の低下によるものなのか、それとも神経などが圧迫されて起きている痛みなのかを調べるためにいくつか神経学的検査を行います。
神経学的検査とは、脳や脊髄、神経の機能を調べる検査です。腰痛関係だと下半身に痛みやしびれが起きている場合に実施します。筋力について調べたり、しびれが出ている部分の触覚や痛覚を刺激したりして、下肢の感覚異常の有無や筋力低下のチェックを行います。
ここでは腰痛治療のときに行われる主な神経学的検査をご紹介します。
【SLRテスト】
SLRテストとは「下肢伸展挙上テスト(Straight Leg raising Test)」の略称。腰椎疾患による下肢痛の有無を調べるテストで、ラセーグテストとも呼ばれます。正常であれば、痛みが起こることなく80度以上、足を挙げることができますが、坐骨神経に障害がある場合は痛みを感じたり、足を挙げることができなくなります。
[SLRテストの方法]
①患者は仰向けに寝ます
②検査する人が患者の片側の下肢を膝を伸ばしたまま持ち上げます
③患者が痛みを感じているかどうか確認します
【FNSテスト】
FNSテストは「大腿神経伸展試験(Femoral Nerve Stretching Test)」の略称で、腰髄神経(L2、L3、L4)の障害を調べる神経学的検査です。この検査で痛みやしびれが発生した場合は大腿神経根障害の可能性があるので、腰椎捻挫や腰椎椎間板ヘルニアなどが疑われます。
[FNSテストの方法]
①患者はうつ伏せなって寝ます
②両膝を90度に曲げます
③患者の下肢を持ち、お尻を抑えます
④股関節を伸展させます
⑤太ももの前面に痛みやしびれがあるかどうかを確認します
<③画像検査の実施>
神経学的検査で腰椎の症状が疑われる場合は、具体的な確認するために患部の画像撮影を行います。
【レントゲン検査】
腰椎のずれを確認するためにレントゲン写真を撮影します。すべりの程度を確認するために、前屈みの状態と後ろに腰を反らした状態でも行います。
【MRI検査】
レントゲン検査で腰椎の状態はわかっても神経の圧迫具合までは判断できません。そのため脊髄や神経根の機能異常が疑われる場合にはMRI検査も行います。
【CT検査】
腰椎分離症が原因で腰椎がずれてしまう分離すべり症が疑われる場合は、疲労骨折などで骨が分離してしまった部分の亀裂を細かく調べるためにCT撮影することがあります。
┃3.治療方法について
治療方法は一般的に保存療法と手術療法があります。病院にかかった時点で重症化しており、生活に支障をきたしている場合はすぐに手術を行わなければいけません。しかし急性期の痛みや、まだ症状が軽い場合はコルセットなどを装着し、安静にして経過を観察します。その際には湿布や痛み止めを処方されることがほとんどです。痛みがひどい場合には神経に直接注射をして痛みを止めるブロック注射を打つこともあります。
手術は症状が起きている根本原因によって方法が様々あります。すべり症により脊椎不安定性が起きており、不安定性がある場合は「脊椎固定術」という手術を行います。一方、不安定性がなく神経の圧迫が原因である場合は圧迫を取り除く手術(除圧術)を行います。除圧術には一般的な椎弓切除や内視鏡手術(PEL)などがあります。
また椎間板の変性によりすべり症が悪化している場合は椎間板を修復する治療である椎間板再生治療(PDR)などがあります。ここでは当院が提供している日帰り手術をご紹介します。
<PDR>
PDRは経皮的椎間板再生治療ともいい、損傷した椎間板を再生する治療方法です。PLDDと併用することも可能で、日帰りで手術を受けることができます。
<PEL>
PELは全ての手術操作を内視鏡下に行う手法であり、体を大きく傷つけずに脊椎内部の奥深いところを観察し、より安全に手術操作が可能となるのが大きな特徴です。
┃4.まとめ
痛みが起きたり、何か違和感があっても病院に行くことに抵抗がある人でも、なんとなくどんな検査をするのかわかって入れば少しでも不安は取り除かれるのではないでしょうか? 腰痛は慢性化しやすい症状です。もしも重症化してしまうと、歩行が難しくなったり、排泄障害が起こることもあるので、何かあれば早めに病院を受診することをおすすめします。
┃YouTubeでも医療知識を紹介しています
今回の内容はYouTubeでも田中院長がお話ししています。そのほかにも様々ありますので、ぜひご覧ください。