太ももから足先にかけてや、お尻など下半身に現れる痛みや痺れが続く状態を指す「坐骨神経痛」という症状。原因は人によって様々で、運動などで酷使したことが痛みのきっかけになっている人もいれば、逆に運動不足が原因で症状が現れることもあります。ここでは坐骨神経痛の主な原因を紹介するとともに、予防方法も合わせて解説していきます。
┃1.坐骨神経痛って何?
坐骨神経痛は病名ではなく、坐骨神経が原因で現れた痛みやしびれなどの総称。症状はお尻から下肢にかけて出現します。
人間には、何かに触れるという動作や、触れたときに感じた感覚、内臓の動きを調整する役割を担っている「末梢神経」という神経があります。この神経は脳や脊髄などの「中枢神経」から分かれて、全身の器官や組織に張り巡らされた神経。役割は大きく3つに分けられます。それは全身の筋肉を動かす「運動神経」、痛みや冷感、皮膚の振動などの感覚、関節の位置を感じる機能を持つ「感覚神経」、血圧や体温の調整や、心臓、腸など内臓の動きを調整する「自律神経」です。
坐骨神経は、末梢神経の中でも最大の長さを持つ神経で、お尻から太もも、ふくらはぎにつながっているほか、膝から下は脛や足裏の神経にもつながっています。私たちが下半身を使って歩いたり、バランスを取ったりできるのは坐骨神経の動きがあってこそなのです。
下肢の痛みや痺れの原因は、この坐骨神経が何かしらの理由でダメージを受けて、働きが悪くなることで起こる症状です。症状の初期は軽いので「いつか治るだろう」と放置したり、原因の改善をしないと悪化してしまい最悪、感覚を失ってしまうこともあります。主な症状は下記3つです。
<運動神経の障害>
手足の筋力が低下したり、筋肉が痩せてきたりします。
<感覚神経の障害>
痛みやしびれが生じます。さらに症状が悪化してしまうと感覚が鈍くなったり、消失してしまいます。
<自律神経の障害>
何もしていないのに異常なほど汗をかくなどの発汗障害や、日中の光が異様にまぶしいなどの異常知覚が診られます。
<坐骨神経痛かセルフチェックしてみよう>
下記の症状が1つでもある場合は、坐骨神経痛の疑いがあります。症状がひどい場合には病院に相談することをおすすめします。
<セルフチェック項目>
- お尻から下肢にかけて痛みや痺れがある箇所がある
- 腰を反らすと下肢に痛みや痺れを感じることがある
- お尻の痛みが強く、座り続けることができない
- 歩くと下肢に痛みや痺れが出て歩けなくなるが、休むと痛みや痺れが取れて再び歩ける
- 身体をかがめると痛みが強くなる
- 長時間、立つことができない
┃2.坐骨神経が傷ついてしまう原因
坐骨神経が傷つく原因は多岐に渡りますが、主な理由として腰椎疾患があげられます。その中でも特に多いのが「腰部脊柱管狭窄症」「腰椎椎間板ヘルニア」「梨状筋症候群」の3つです。このほかにも、アルコールなどの中毒性疾患や糖尿病、骨盤内や脊柱、脊髄のがんも坐骨神経を圧迫する可能性があるため、原因となっている場合があります。
<腰部脊柱管狭窄症>
腰部脊柱管狭窄症とは、腰の部分の背骨を構成する「脊柱管」という部分が狭まった状態を指します。加齢などによって脊椎にある椎間板などが老化によって変形していくと、それが原因となって脊髄神経の通り道である脊柱管が圧迫され、痛みや痺れを感じるようになってしまいます。
<腰椎椎間板ヘルニア>
腰部分の背骨「腰椎」を連結させている「椎間板」の髄核が飛び出してしまい、脊柱管の神経を圧迫してしまう病気です。姿勢の悪さから腰に負荷を慢性的に加えてしまってしまっている場合のほか、重い荷物を持ち上げたとき、くしゃみをしたときに発生します。
<梨状筋症候群>
梨状筋とは、お尻を構成する筋肉の一つ。骨盤の出口付近にある筋肉で仙骨から足の付け根まで伸びており、股関節の動きに深く関与しています。また梨状筋は周りを大殿筋におおわれています。梨状筋症候群とは、スポーツ外傷や交通事故などの怪我が原因で神経が圧迫され、痛み胃が出てしまう症状です。
┃3.坐骨神経痛を予防するには
ほとんどの場合、日常生活の姿勢や習慣を見直すことで坐骨神経痛は改善、予防することができます。大切なのは、普段から腰に負担をかけないこと。また血流の流れが悪くなると周りの筋肉がこわばってしまい痛みにつながることもあるので、身体を冷やさないようにすることも重要です。
<坐骨神経痛予防のために日常生活で気を付けたいこと>
- 長時間、同じ姿勢にならないようにする
- 体重が均等にかかるように座ったり立ったりする
- 中腰を長時間続けない
- 背筋を伸ばして姿勢を保つ
- 重いものをできるだけ持たないようにする
- 背筋と腹筋のトレーニングをバランスよく行う
- 肥満にならないようにする
- 軽い運動習慣やストレッチ習慣を身につける
すでに強い痛みやしびれがあり、日常生活に支障をきたしている場合は重症化している可能性があります。その場合は自己判断ではなく、速やかに病院で検査や治療を受けるようにしましょう。
┃4.もしも重症化してしまった場合は
重症化した場合は治療を受ける必要があります。運動療法などでもよくならなかった場合は手術を受ける必要があります。ここでは腰痛改善のための手術をご紹介します。
<手術:PLDD>
PLDDはレーザーを椎間板内の髄核に照射することで、椎間板を縮小し、神経の圧迫を軽減することで痛みを改善する治療です。施術に要する時間は一箇所あたり15~30分程度で、院内の滞在時間も数時間程度で済むため、日帰りでの手術が可能です。
<手術:PDR>
PDRは経皮的椎間板再生治療ともいい、損傷した椎間板を再生する治療方法です。PLDDと併用することも可能で、日帰りで手術を受けることができます。
<手術:PED>
PEDは、経皮的内視鏡下椎間板摘出術とも呼ばれる手術。細い内視鏡を使って行う手術で低侵襲なのが特徴です。手術は日帰りで受けることができるほか、術後の生活への影響も少ないとされています。
┃5.まとめ
坐骨神経痛は初期症状であれば、日常生活を見直すことで改善する見込みも多いにあります。しかし無理は禁物。何か違和感があれば、まずは専門医に相談するのもいいかもしれません。