加齢とともに痛みが出てきてしまうことは多々あります。痛みになっているということは「体のどこかで異常が出ている」というアラートでもあります。手足や腰に痛みが出ている場合、もしかしたら脊髄神経が圧迫されていることが原因かもしません。ここでは脊柱管狭窄症についてと、幹細胞を使った再生医療についてご紹介します。
◆目次
1.脊柱管狭窄症とは?
2.脊柱管狭窄症の診察・検査方法
3.脊柱管狭窄症のこれまでの治療方法
4.脊柱管狭窄症の新しい治療法
5.当院の幹細胞治療の流れ
6.幹細胞治療のメリットとデメリット
7.まとめ
┃1.脊柱管狭窄症とは?
<そもそも「脊柱管」って何?>
人間の背骨のことを医学用語で脊柱(せきちゅう)と言います。人間の脊柱は首からお尻当たりまで伸びていて、椎骨(ついこつ)という骨を椎間板や靭帯で連結して構成されています。
人間の場合、椎骨は首当たりを支える「頸椎(けいつい)」7個、胸あたりを支える「胸椎」12個、腰を支える「腰椎」5個、その下にあって腰の中央を支える「仙椎」、お尻にある「尾骨」で成り立っています。仙椎は仙椎5個が、尾骨は3~5個が成長とともに癒合して一つになったもの。それぞれの部位によって形も大きさも異なります。
脊柱管とは、椎骨とそれを繋ぐ椎間板や靭帯に囲まれてできたトンネル状の管のこと。その中には脳から続く脊髄神経があり、内部は脳や脊髄を外部からの衝撃や振動から守るクッションのような役割を持つ「脳脊髄液」で満たされています。ここでは脳から出た指令を各部分に伝えたり、外部から刺激があったとき、その情報を脳に伝える役割を果たしています。
<脊柱管狭窄症の症状>
脊柱管狭窄症は、名前の通り、脊柱管が狭まった状態を指します。要因としては、椎間板が出っ張ってヘルニアになったり、椎骨そのものが変形したりするほか、脊髄の後方にある黄色靭帯が骨化して大きくなったりすることが挙げられます。脊柱管が狭くなると中を走る神経が圧迫され、痺れや痛みなどの運動障害が起こります。主に頸椎と腰椎に発症することが多く、どの脊柱管が狭まっているのかで、症状が出現する箇所が変わるのも特徴です。
ただし、脊柱管狭窄症と診断されても痛みや痺れなどの症状が出ない場合もあります。
また脊柱管が狭くなることで、狭くなった神経周辺の血管が収縮してしまい、血流が低下します。そうすると筋肉などが硬直して症状が悪化することもあります。
【頸椎に発症した場合】
手足に痛みや痺れが起こります。お箸が使いにくい、ボタンがかけづらい、ふらつくなどの症状が見られます。
【腰椎に発症した場合】
腰から下の痺れや痛みが起こります。歩いているとお尻や足に痛みやしびれを感じ、休むと楽になるので、再び歩くとまた痛くなってしまう症状「間欠跛行(かんけつはこう)」が特徴的です。
また症状が重くなると痛覚障害だけでなく、排尿・排便障害が出ることもあります。
┃2.脊柱管狭窄症の診察・検査方法
脊柱管狭窄症だからといって、それが痛みや痺れの原因ではないこともあります。症状の原因が脊柱管狭窄症だと診断するためには様々な観点から診察、検査を行い、総合的に判断しなければいけません。
<診察>
診察では身体的な所見と神経学的な所見の2つの観点から診断していきます。
【身体的所見】
- 歩いて痛みが出るまでの距離や時間を診る
- 腰を反らしたときに症状が悪化するか
- 症状の出方や出ている部位の確認 など
【神経学的所見】
- 知覚障害の有無の確認
- 筋力低下の有無の確認 など
<検査>
主にレントゲン、MRI、CTの画像検査を行います。
【レントゲン検査】
背骨全体の並びやバランスのほか、骨が変形しているのか、変形している場合はどの程度進行しているのかを確認します。
【MRI検査】
神経や椎間板の撮影を行います。脊柱管がどれだけ狭くなっているのかが、最もよく確認できる検査方法です。
【CT検査】
骨の構造を細かいところまで確認することができます。脊柱管が狭くなっている部位の状況把握にとても有効な検査方法です。
┃3.脊柱管狭窄症のこれまでの治療方法
神経の圧迫を根本的に改善できる方法を取ります。症状が軽い場合は保存療法で改善することがありますが、症状が悪化して歩行や日常生活に支障をきたす場合は手術を行わないといけないかもしれません。
<神経ブロック>
局所麻酔や生理食塩水を患部に注射して、痛みを和らげる治療法です。神経に作用して痛みの伝わる経路をブロックすることで、痛みを取り除きます。また患部を特定するために神経ブロックを使って痛みが緩和されるかを確認することもあります。
<薬物療法>
鎮痛剤などを内服することで痛みを緩和し、日常生活に支障がでないようにします。また血行を促進する薬などを処方されることもあります。
<装具療法>
患部を安定させるためにコルセットなどを着用します。
<リハビリ>
患部周辺の筋力を維持するため、ストレッチやトレーニングを行います。
<温熱療法>
痛む部分を温めて血行を促進させることで痛みを緩和します。
<手術:除圧術>
脊柱管を狭くしている骨や靭帯、つい神庭を削って脊柱管を拡大します。MEL(内視鏡下腰椎椎弓切除術)やFEL(完全内視鏡下腰椎椎椎弓切除術)といった低侵襲の方法もあります。
<手術:固定術>
背骨にぐらつきがあったり、大きなずれがある場合に行われます。内視鏡下腰椎椎体間固定術や内視鏡下腰椎側方椎体間固定術などの低侵襲の術式もあります。
┃4.国内唯一の「脊柱管狭窄症×再生医療」を提供
当院では国内で唯一、脊柱管狭窄症の手術と再生医療を組み合わせた治療を行っています。
脊髄神経は自己修復能力がなく、傷つくと自然に再生することができない部分です。そのため、手術などで痛みの根本原因は取り除いても、長年の刺激で過敏になった痛覚はそのままの状態になってしまい、慢性的な痛みに悩まされる場合も少なくありません。しかし、近年は再生医療の発展によって、改善の見込みが出てきました。
<幹細胞治療とは>
幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。
幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。
変形性膝関節症の治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、痛みの出ている患部に注射することで傷ついた組織を修復する再生治療です。
┃5.当院の幹細胞治療の流れ
<当院の治療メニューと料金>
医師による診察・カウンセリング:11,000円
感染症検査(採血):11,000円
幹細胞点滴(1億個):1,650,000円
幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。
①カウンセリング
事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。
②検査
感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。
③脂肪採取
腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。
④幹細胞の培養
脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。
⑤幹細胞の静脈内投与、局所投与
培養した幹細胞を点滴、局所に投与します。
⑥経過観察
その後の効果について定期的に経過観察を行います。
┃6.幹細胞治療のメリットとデメリット
幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。
<メリット>
・患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
・今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
・入院の必要がなく、外来で治療をすることができます
<デメリット>
・自由診療のため保険が適応されません
・新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
・患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります
┃7.まとめ
軟骨のように傷つくと自然に再生しない機能も、再生医療の発展によって回復できるようになってきました。数十年前には「難しい」と断られてしまった症状でも、今では治すことができるかもしれません。もしも気になった方や、長年悩まれている方は当院にお気軽にご相談ください。