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2024.12.01

変形性股関節症が再生医療で治るかも? 傷ついた軟骨を回復させる治療法

軟骨がすり減ることで炎症を起こし、股関節が変形してしまう「変形性股関節症」。進行すると痛みが強くなり、次第に日常生活に支障をきたすようになっていきます。これまでは軟骨自体を再生させることは難しいとされていましたが、現在は再生医療の研究が進んだことによって根本治療が可能になってきました。ここでは変形性股関節症についてと、その治療方法についてご紹介します。

┃1.変形性股関節症とは?

変形性股関節症とは、股関節を滑らかに動かすための軟骨がすり減って炎症を起こしてしまい、痛みや股関節の変形を引き起こす病気です。股関節の臼蓋(きゅうがい)の発育が不十分で、大腿骨頭を十分に覆うことができない状態の「臼蓋形成不全」という症状を抱えている人は発症リスクが高く、股関節症全体の約80%と言われています。

脚の付け根や腰、太ももに痛みやこわばりが起きることで、股関節の可動域が狭くなってしまいます。そうすると靴下を履いたり、爪を切ったりするのが難しくなったり、歩くときに脚を引きずってしまうという現象が起こってしまいます。さらに症状が進行すると、夜寝ていても脚が痛む「夜間痛」に悩まされる場合も少なくありません。

近年は高齢社会になっているということもあり、特に明らかな原因となる病気に患ったことがなくても年齢とともに股関節症を発症することもあります。

<進行度合と診断について>

股関節症は具体的に変形の程度によって、前期関節症、初期、進行期、末期に分けられます。

前期関節症と言われる超初期のうちは、関節が華奢だったり、変形したりしているだけでまだ軟骨が十分に残っている状態。そのため股関節に痛みがほとんど現れません。もしも現れたとしても、しばらくたつと痛みが収まります。そのため体の左右のバランスが違っていないか、臀部や太ももに違和感や倦怠感がないか、股関節脱臼を経験したことがあるかどうかなどを確認して判断します。

症状が出ている場合は、レントゲン写真を取って症状を確定します。

初期関節症になると、軟骨の厚さが薄くなって関節の隙間が狭くなったり、関節軟骨の石灰層の下に連続している骨「軟骨下骨」が硬くなってしまう「骨硬化」という現象が起こります。さらに症状が進行して進行期や末期になってくると、関節面の軟骨が肥大増殖し、次第に硬くなって骨化した「骨棘(こっきょく)」と呼ばれるとげのようになったものが関節の中や患部周囲にできます。このほか軟骨が損傷した部位から関節液が骨に侵入して骨が溶け、穴があくことで発生する「骨嚢胞(こつのうほう)」が起こります。この2つの症状は変形性股関節症の特徴的な所見でもあります。

最終的には体重がかかる部分の関節軟骨が消失し、その下にある軟骨下骨が露出してしまいます。

 

┃2.変形性股関節症のこれまでの治療法

変形性股関節症の進行には「軟骨がどれだけ残っているか」というのが大きく関わってきます。軟骨は基本的に傷つくと再生しない機能とされています。そのため軟骨が削れるのを防ぐために負担を減らすことが大切です。

<保存療法>

股関節にかかる負荷を減らすための生活指導を行います。痛みのある股関節と反対側に杖をつくなどすると痛みやバランスが改善され、歩行能力の回復を期待することができます。このほかプールでの水中歩行など有酸素運動や股関節周りの筋力増強訓練なども有効とされています。

<痛み止め>

鎮痛剤などを内服することで痛みを緩和し、日常生活に支障がでないようにします。

<骨棘を削る>

手股関節の適合性を向上させることを目的とした外科的治療法。自分の骨や関節を残して行うので「関節温存術」とも言われます。軟骨が十分に残っていることが条件なので、初期から進行期などの比較的早い段階で行うことができます。また関節温存術には切った骨が癒合しないという合併症が起きる場合もあります。

<手術:人工股関節に置き換える>

変形が進行していて、関節が壊れている場合は、股関節を金属などの人工材料に置き換える「人工股関節置換術」を行います。痛みの根本を改善するため、大きな効果が得られます。

┃3.変形性股関節症の新しい治療法

軟骨は自己修復能力が低いため、傷つくと自然と再生することができません。この理由は、軟骨組織には血管がないので、傷を治すための細胞や栄養が届けられないからです。しかし近年の再生医療の研究が進展したことで、軟骨も再生できる可能性が高まってきました。

軟骨の再生には「幹細胞」を使用します。

<幹細胞治療とは>

幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。

変形性関節症の治療では、患者自身の身体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、痛みの出ている患部に注射することで傷ついた組織を修復する再生治療です。

┃4.当院の幹細胞治療の流れ

<当院の治療メニューと料金>

医師による診察・カウンセリング:11,000円
感染症検査(採血):11,000円
幹細胞点滴(1億個):1,650,000円

幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

①カウンセリング
事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

②検査
感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

③脂肪採取
腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

④幹細胞の培養
脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。

⑤幹細胞の静脈内投与、局所投与
培養した幹細胞を点滴、局所に投与します。

⑥経過観察
その後の効果について定期的に経過観察を行います。

┃5.幹細胞治療のメリットとデメリット

幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

<メリット>
・患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
・今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
・入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

<デメリット>
・自由診療のため保険が適応されません
・新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
・患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります

┃6.まとめ

軟骨のように傷つくと自然に再生しない機能も、再生医療の発展によって回復できるようになってきました。数十年前には「難しい」と断られてしまった症状でも、今では治すことができるかもしれません。もしも気になった方や、長年悩まれている方は当院にお気軽にご相談ください。

【参考資料・論文】

Dall’Oca Carlo, B. S., Nicholas, E., Roberto, V., Elena, M. S., & Bruno, M. (2019). Mesenchymal Stem Cells injection in hip osteoarthritis: preliminary results. Acta Bio Medica: Atenei Parmensis, 90(Suppl 1), 75.

変形性股関節症に対する PRP 関節内注射療法の 疼痛改善効果に関する臨床研究

King LK, Bodmer NS, Saadat P, Bobos P, Hawker GA, da Costa BR. Intracluster correlation coefficients in osteoarthritis cluster randomized trials: A systematic review. Osteoarthritis and Cartilage 31, no. 12 (2023): 1548-1553.

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