生活習慣病の一つでもある動脈硬化。動脈硬化性の疾患は、日本人の死因の30%を占めるとも言われています。高血圧や糖尿病などが原因となって血液の流れが悪くなってしまう病気で、最悪の場合急死してしまうこともあります。もしも急死を免れたとしても発症から治療まである一定の時間を越してしまうと、重症化してしまい、生活の質が下がるような後遺症に悩む場合も少なくありません。そのため何よりも予防、改善が重要です。ここでは動脈硬化の予防に効果のある再生医療についてご紹介します。
◆目次
1.動脈硬化とは?
2.動脈硬化の原因
3.動脈硬化が原因の病気は?
4.動脈硬化の予防と治療
5.再生医療で損傷した血管を改善する
6.幹細胞治療の流れ
7.幹細胞治療のメリットとデメリット
8.まとめ
┃1.動脈硬化とは?
動脈硬化とはその名前のとおり、動脈が硬くなって弾力性が失われた状態。血管壁にコレステロールがたまり、硬くなったり狭くなったりして血液の流れが悪くなってしまいます。そうすると心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を引き起こす原因となります。
また生活習慣とも密接に関わっており、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は、動脈硬化を促進させるとも言われています。
┃2.動脈硬化の原因
血管の中にできる「プラーク」と呼ばれるコブのようなものが、動脈硬化を引き起こす直接的な原因です。血液中の悪玉コレステロールは血管の壁に入り込むのですが、これを遺物と見直して、白血球の仲間が悪玉コレステロールを排除しようと、次々と取り込んでいきます。そのあとに取り込んだときに出た残骸と残った悪玉コレステロールによって血管の壁にプラークができてしまうのです。
プラークが増えると血管の肉壁が熱くなり、血液の通り道が狭くなってしまいます。こうして動脈硬化が進行していきます。
また肥満、高血圧、喫煙などの間接的な要因で動脈硬化が進むこともあります。
<肥満>
肥満になると内臓脂肪が増えます。そうすると比例して血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪も増えていき、善玉コレステロールが減少。悪玉コレステロールが増えることで、白血球の活動は活発になります。また中性脂肪の増加は超悪玉コレステロールを増やす原因にもなるので、注意が必要です。
<高血圧>
血圧が高いと、常に血管に負荷がかかっている状態になります。そうすると血管は傷がつき、悪玉コレステロールが血管の壁に入り込みやすい状態となってしまいます。
<糖尿病>
高血糖や糖尿病はインスリンの動きが低下してしまうので、血液中のブドウ糖が増加。ドロドロした血になってしまいます。そうすると血管内にコレステロールなどの付着物がつきやすくなってしまい動脈硬化の発症や進行を促進してしまいます。
<喫煙>
煙草を吸うと血管が収縮する作用があります。この収縮自体が血管の細胞にダメージを与えてしまっており、高血圧の原因となります。また活性酸素を増やすので悪玉コレステロールによる血管の壁の中での酸化を進めてしまうのです。
┃3.動脈硬化が原因の病気は?
動脈硬化が原因の主な病気は下記のようなものがあります。
<脳卒中>
脳内で動脈硬化が起こって進行すると脳卒中を引き起こす可能性があります。脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあり、いずれも患部周辺の脳の細胞が死んでしまいます。最悪の場合、死に至る危険も。もしも生存したとしても高確率で身体に障害が残ってしまいます。
<心筋梗塞>
心臓に酸素や栄養などを運ぶ冠動脈で動脈硬化が進み、プラークが破れて血栓となり冠動脈の血流が完全に止まることで心臓の筋肉の組織が死んでしまう病気です。
<狭心症>
動脈硬化によって心臓へ流れる血流が悪くなり、心臓の筋肉に血液が不足すると胸が苦しくなったり、痛くなったりする症状を指します。
<腎硬化症>
高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化が起こり、腎臓の障害を引き起こす疾患です。特に濾過の役割を持つ糸球体にある細動脈は血圧による負担がかかりやすく、ここが硬化すると腎機能が低下し、慢性腎不全になってしまいます。
<萎縮腎>
腎臓が正常時の半分近くも縮んでしまい、硬くなって機能不全に陥った状態。多くの腎疾患の末期像としてみられ、腎代替療法を必要とする末期腎不全患者では、自己腎が多くの場合委縮します。
<尿毒症>
腎臓の働きが極度に低下して起こる全身の変化をいう尿毒症は、急性もしくは慢性の腎臓障害が進行した状態です。胃腸には食欲低下、吐き気など、血液では貧血、カリウム情報、はいには咳、呼吸困難、水がたまるなどの症状が現れます。
┃3.動脈硬化の予防と治療
動脈硬化はとにかく予防が大切。そのためにも適切な運動やバランスのいい食事が必要不可欠です。ここでは具体的な予防のポイントを紹介します。
<食生活を見直す>
食生活を見直して肥満を解消することが、動脈硬化の予防にはとても効果的です。
- ・肉などの動物性脂肪の摂取を控える
- ・インスタント食品などを控える
- ・お菓子などの甘いものを控える
- ・塩分を摂り過ぎないよう、料理の味付けを薄目にする
- ・飲酒を控える
- ・血圧を下げ、脂質の酸化を防ぐ野菜をたくさん食べる
このほか血液をサラサラにする食品や栄養素などを取るのもいいかもしれません。
【血液をサラサラにする栄養素と食べ物】
- ・ナットウキナーゼ:納豆
- ・クエン酸:梅干し/お酢 など
- ・DHA/EPA:青魚など
- ・ポリフェノール類:赤ワイン/ぶどう/緑茶/ココア など
- ・アルギン酸:昆布/わかめ など
- ・ビタミンE:かぼちゃ/にら/アスパラガス/鯖/鮭/ナッツ類/キウイフルーツ など
- ・ビタミンC:レモン/オレンジ/イチゴ/サツマイモ/ピーマン など
<適度な運動を行う>
適度な運動は肥満解消や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を改善するのに効果が期待できます。筋トレなどの無酸素運動よりも、ウォーキングや水中運動の有酸素運動の方がおすすめです。
<禁煙する>
煙草を吸っている人は、禁煙を心がけましょう。煙草を吸うことで悪玉コレステロールは増えませんが、血管にダメージを与えるので、血管の内壁に悪玉コレステロールが入り込みやすくなってしまいます。
┃5.再生医療で損傷した血管を改善する
これまで動脈硬化に対しては予防したり、症状を改善することが主な対処法だったのですが、再生医療の進化によって血管の修復や既存の血管から新しい血管が作り出される働きを促進することで治療することができるようになりました。
<幹細胞治療とは>
幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。
幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。
動脈硬化の治療では、患者自身の身体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを傷ついた血管を修復する再生治療です。
┃5.当院の幹細胞治療の流れ
<当院の治療メニューと料金>
医師による診察・カウンセリング:11,000円
感染症検査(採血):11,000円
幹細胞点滴(1億個):1,650,000円
幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。
①カウンセリング
事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。
②検査
感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。
③脂肪採取
腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。
④幹細胞の培養
脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。
⑤幹細胞の静脈内投与
培養した幹細胞を点滴で静脈内に投与します。
⑥経過観察
その後の効果について定期的に経過観察を行います。
┃6.幹細胞治療のメリットとデメリット
幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。
<メリット>
・患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
・今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
・入院の必要がなく、外来で治療をすることができます
<デメリット>
・自由診療のため保険が適応されません
・新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
・患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります
┃7.まとめ
再生医療の進展によって、これまでは対症療法しかなかった症状も、根本治療できるものが増えて来ました。また予防の方法も様々です。より効果のある方法で、予防に取り組むのもいいかもしれません。気になった方はお気軽に当院までご相談ください。
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