慢性的な痛みに悩まされた経験はありますか? 痛みの原因となった怪我や病気が治ったあとも1か月以上、または痛みの再発と消失が繰り返されるという症状は「慢性疼痛(まんせいとうつう)」と呼びます。特定の原因がわからなかったり、神経が過敏になっていることで起こるのでなかなか完治が難しい症状でした。しかし近年、再生医療の進展によって根本的に改善することが可能になってきています。今回は慢性疼痛と再生医療についてご紹介します。
┃1.慢性疼痛とは?
慢性疼痛とは漢字の通り、慢性的に疼くような痛みが続く症状です。原因はがんや糖尿病、関節炎などの慢性疾患や、完治しない怪我が原因であることが多いです。感覚神経が過敏になって障害として起こる場合もあり、普通の痛み止め薬では改善の効果が得られません。
また痛みに対して不安を感じやすい人などは、痛みを感じにくくさせる物質の生産量が少なくなってしまうこともあるため、心の動きも大きく影響します。
人それぞれ原因が異なるため、治療が難しい場合がほとんどです。
<慢性疼痛の判断材料>
- ・3か月以上痛みが続く。もしくは同じ個所の痛みを何度も再発する
- ・痛みの原因になった怪我や病気が完治したあとでも、痛みだけ1か月以上続く
- ・慢性的な病気、治らない怪我による痛みがある
┃2.慢性疼痛の主な治療方法
慢性疼痛は主に下記のような処置を行います。
- ・鎮痛薬の使用
- ・理学療法や作業療法
- ・鍼治療、マッサージ、経皮的電気神経刺激などの補完・統合医療での鎮痛法
- ・精神療法と行動療法
このほか、ここ数年では再生医療の発達により、原因が特定できてなかった慢性疼痛にも対応できる可能性が出てきました。これまでほとんどの症例で対症療法を取っていたのですが、再生医療によって根本治療をできる可能性が高まっています。
┃3.幹細胞を使った慢性疼痛の治療
多くの場合、慢性疼痛の原因は神経伝達の異常です。
人間は、痛みの刺激が抹消で電気信号に変換され感覚神経線維を伝わったあと、脊髄を通して脳に伝達されることで「痛い」と認識します。一方、痛みをできるだけ弱めるための物質を生産する神経伝達も。脳に痛みという情報を伝える信号に対して、脳から痛みを抑制する信号が作用して、実際に脳に伝達される痛みが少なくなっているのです。
繰り返し刺激を受けていると過敏になってしまった神経は、刺激がなくなっても刺激を受けていた状態のままになってしまうという性質を持っています。そのため、痛覚が過敏になっている状態が続いてしまうのです。
このほか不安やストレスなどネガティブな心理状態が続いた場合、痛みを抑制する作用を持つ脳内ドーパミンの放出量が減少。それによって痛みを感じやすくなってしまいます。
慢性疼痛の再生医療では過敏になってしまった神経を元の状態に戻すことを目指します。
<幹細胞治療とは>
幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。
幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。
慢性疼痛の治療では、患者自身の身体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、痛みの出ている患部に注射することで傷ついた組織を修復する再生治療です。
┃4.当院の幹細胞治療の流れ
<当院の治療メニューと料金>
医師による診察・カウンセリング:11,000円
感染症検査(採血):11,000円
幹細胞点滴(1億):1,650,000円
幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。
①カウンセリング
事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。
②検査
感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。
③脂肪採取
腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。
④幹細胞の培養
脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。
⑤幹細胞の静脈内投与
培養した幹細胞を点滴で静脈内に投与します。
⑥経過観察
その後の効果について定期的に経過観察を行います。
┃5.幹細胞治療のメリットとデメリット
幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。
<メリット>
・患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
・今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
・入院の必要がなく、外来で治療をすることができます
<デメリット>
・自由診療のため保険が適応されません
・新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
・患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります
┃6.まとめ
これまで対症療法しかなかった治療も、再生医療の進展によって根本治療できるものが増えて来ました。数十年前には「難しい」と断られてしまった症状でも、今では治すことができるかもしれません。もしも気になった方や、長年悩まれている方は当院にお気軽にご相談ください。
参考資料・論文
・筋骨格系疼痛に対する間葉系幹細胞培養上清液の治療効果