脳動脈瘤とは
発生した部位に応じて、中大脳動脈、内頚動脈、前交通動脈、脳底動脈などに分けられます。
大きさは2ミリほどのものから20ミリ以上のものまでさまざまですが、大半が10ミリ未満です。
脳動脈瘤が破裂した状態がくも膜下出血であり、命にかかわる事態となります。
脳動脈瘤を引き起こす原因
脳動脈瘤の原因は、未だはっきりと解明されていません。
ただ、高血圧、遺伝、喫煙習慣などが発症に何らかの影響を与えているものと考えられます。
脳動脈瘤の主な症状
破裂脳動脈瘤の場合の主な症状
脳動脈瘤が破裂した状態、つまりくも膜下出血に見られる症状です。
もっとも特徴的な症状として、バットで殴られたような強烈な頭痛が挙げられます。
- バットで殴られたような強烈な頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 首のこわばり、いたみ
- 目のかすみ、物が二重に見える
- 瞳孔が開く
- 目の奥の痛み
- 光過敏
- 感覚の低下、消失
- 意識の低下、消失
未破裂脳動脈瘤の主な症状
破裂してない動脈瘤の約60%は、症状がありません。
残りの約40%で、以下のような症状が見られます。
- 視野の狭まり
- 物事を考えることの困難
- 言葉を喋りづらいと感じる
- 知覚異常
- 平衡感覚の低下
- 集中力の低下
- 近い過去の記憶を忘れてしまう
- 疲労感、倦怠感
- 急な行動変化
脳動脈瘤の検査・治療法
検査・診断
CT検査、MRI検査などを行い、診断します。
脳動脈瘤の正確な位置と大きさ、形を把握するために、脳血管造影検査やCT血管造影検査を行うこともあります。
治療法
脚のつけ根からカテーテルを挿入し、そのカテーテルを通して脳動脈瘤へとコイルを送り込んで塞栓する「コイル塞栓術」は、低侵襲の治療としてご高齢の方に行われることが多くなります。
「開頭クリッピング術」では、開頭の上で脳動脈瘤の根元にクリップをかけて、脳動脈瘤への血流を阻害します。同部位での再発リスクが抑えられるというメリットがあります。
未破裂脳動脈瘤に対して
行う予防的治療の
判断
未破裂脳動脈瘤は、やがて破裂するおそれがあります。と同時に、破裂しない可能性もあります。
未破裂脳動脈瘤に対して予防的治療(より重大な事態への進展を防ぐために予め行う治療)を行うかどうかは、実施した場合と経過観察に留めた場合のリスクを考慮し、症例ごとに判断することが大切になります。
脳卒中ガイドラインでは、以下の①や②に該当する場合に、予防的治療を検討することが推奨されています。
- 大きさが5~7ミリの未破裂脳動脈瘤
- 大きさが5ミリ未満の未破裂脳動脈瘤のうち、次のいずれかに該当するもの
(ア)症候性の脳動脈瘤
(イ)前交通動脈、および内頚動脈~後交通動脈部などにある脳動脈瘤
(ウ)血管との基部の広さに対して瘤が大きい、形が不正、ブレブ(二段のドーム状の瘤)があるなどの形態異常がある
(脳卒中ガイドラインより)
未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は、一般に1年あたり1%と言われています。これはたとえば50歳で脳動脈瘤が見つかった場合、その後30年間で30%の確率で破裂する、ということです。もちろん、脳動脈瘤の大きさや年齢、他のリスクなど考慮すると、この確率がより高くなることもあれば、低くなることもあります。
破裂リスクの高い脳動脈瘤とは
椎骨・脳底動脈、前交通動脈、内頚動脈~後交通動脈分岐部に生じた脳動脈瘤は、一般に破裂のリスクが高くなります。
その他、複数の脳動脈瘤があるケース、くも膜下出血の家族歴があるケース、高血圧や多発性嚢胞腎を有するケース、喫煙習慣があるケースでは、破裂のリスクが高くなります。
いずれも相対的なものであり、該当するから破裂する・該当しないから破裂しない、というわけではありません。
判断基準の1つとなる「年齢」
予防的治療を行うかどうかは、年齢も大きくかかわってきます。90歳や100歳の方に小さな動脈瘤が見つかったからといって、通常は治療を行うことはありません。
一般に、予防的治療を検討するのは、70歳未満の方に動脈瘤が見つかった場合です。平均寿命まで長い時間がある方ほど、その年月を過ごすうちに、破裂のリスクも高くなるものと考えられるためです。